Accessを使える人が社内にいない|人材難でシステムを維持する方法
「Accessを触れる人がいない・採用できない」問題への現実的な対処を解説。外部保守委託・最小限の文書化・触らない運用の3つの維持策と、属人性の低い仕組みへの移行を当社実務基準で整理します。
結論:Accessを触れる人材がいなくても、今すぐできる手はある
「社内にAccessを触れる人間がいない」「採用しようとしても来ない」。この状況で取れる手は、大きく2つに分かれます。当面の維持策(外部保守・最小限の文書化・触らない運用)と、根本策(属人性の低い仕組みへの移行)です。どちらか一方だけという話ではなく、まず維持策で業務を止めずに時間を確保し、並行して根本策を検討するのが現実的な順序です。
この記事で扱うのは「使える人材がいない・採用難」という人の問題です。「作った担当者がいない」という設計ドキュメントや構造の問題はAccess属人化の記事で扱っていますので、そちらも参照してください。
なぜAccess人材が集まらないのか
当社の実感では、Access・VBAを実務で使える人材は年々少なくなっています。理由はいくつか重なっています。
当社の実感では、新卒・中途を問わず若い層でAccessを学ぶ機会が減っています。IT系のトレンドがクラウドサービスやPythonに向かっている影響もあり、VBA/Accessを専門的に習得する動機が生まれにくい状況に見えます。カリキュラム調査を行ったわけではありませんが、支援案件での採用支援の経験からそう感じています。
次に、社内でAccessを知っている人が退職・異動すると、引き継ぎができないまま放置されるケースが当社案件でも散見されます。結果として「触ったことがある人が誰もいない」状態になります。採用でAccess経験者を探しても、スキルセットが合わない・条件が折り合わないといったことも起きます。
加えて、Accessを教えられる人が社内にいないため、新しい担当者を育てようとしても難しい。外部のAccess研修も存在はしますが、業務で使えるレベルに引き上げるには実際のシステムを使った実地訓練が必要で、研修だけでは補えない部分があります。
「人材がいない」状況でAccessを維持する3つの手
根本策を検討しながらも、目の前のシステムを止めない手段が必要です。当社が支援案件でよく見る維持策は次の3つです。
| 手段 | 向くケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 外部の保守委託 | エラー対応・小改修が年に数回ある | Accessを扱える業者は限られる。費用・レスポンスを事前確認 |
| 最小限の運用手順の文書化 | 業務手順は決まっているがメモが一切ない | 「Accessの仕様書」ではなく「業務の手順書」を優先して作る |
| 触らない運用(現状固定) | 改修ニーズがほぼなく安定稼働している | 環境変化(Windows更新・PC交換等)でいつか動かなくなる前提で備える |
外部の保守委託
Accessを扱える外部業者に保守を委託するのは、エラー対応・帳票の微修正・データ修正など「たまに手が要る」場面では現実的な選択肢です。ただし、当社の実感ではAccessを実際に触れる技術者がいる業者は多くありません。Excelマクロは対応できるが、Accessの修正は経験が薄いというところも当社の案件で見ることがあるため、依頼前に「Accessの保守実績があるか」を確認することをおすすめします。
保守委託のもう一つの利点は、移行を検討するタイミングで「現状を知っている人」が外部にいることです。システムの挙動を把握した保守担当者がいると、移行の見積もりや要件整理がスムーズになります。
最小限の運用手順の文書化
「Accessの仕様書を完全に作る」のはコストが高く、人材がいない状況でやろうとすると頓挫しがちです。当社が現実的と考えるのは、仕様書ではなく業務の手順書を先に作ることです。「毎月何日に何をどの順で操作するか」「エラーが出たときの一次対応」を記録しておくだけで、別の担当者が引き継いだときに動けるようになります。
文書化の具体的な進め方は最低限残すべきドキュメントの記事で整理しています。仕様書ゼロから何を優先して作るかを4点に絞って解説しているので参考にしてください。
触らない運用(現状固定)
改修ニーズがほぼなく、現状で業務が安定して回っているなら、あえて手を加えずに固定するのも一つの判断です。ただしこの場合も、Windowsのアップデートや使用中のPCが故障したときの対応は考えておく必要があります。特定のPC1台でしか動かない場合、そのPCが壊れると業務が止まるリスクは常にあります。
BCP(事業継続)の観点から言うと、代替で動かせる環境の確認とバックアップの整備は最低限やっておくべきです。Access業務のBCPについてはAccess BCPの記事でまとめています。
「人材不在」が根本問題になる前兆
維持策で時間は稼げますが、次のいずれかに当てはまる場合は早めに根本策の検討を始めることをおすすめします。
- 唯一の担当者が退職・異動を予定している
- 改修依頼が毎月のように発生しているが、対応できる人がいない
- 業務の規模が拡大しており、今のAccessでは処理が追いつかなくなってきた
- Access 2021のサポート終了(2026年10月13日)が迫っており、移行先の検討が遅れている
このうちAccess 2021のサポート終了(2026年10月13日)については、2025年11月8日時点でMicrosoftから公式のESU提供案内は確認できていません。サポートが切れると新しいセキュリティ修正が届かなくなるため、人材がいない状態のまま時間が経つほど、動かなくなったときのリスクが高まります。
根本策:属人性の低い仕組みへの移行
人材がいない問題を根本から解決するには、Accessに依存しない仕組みへ移行することが最終的な答えになります。移行先には、kintone・Power Apps・Webシステムなど複数の選択肢があります。
移行先を選ぶ基準の一つが「保守に必要なスキルの汎用性」です。当社の支援経験では、kintoneのような低コードツールは、業務要件によっては社内管理者がAccessの専門知識なしに設定変更や軽度な改修を担える場合があります。Power Appsも、Microsoft 365の管理経験がある方であれば学習コストを抑えやすい一方、独自の式言語やデータモデルの理解は別途必要になります(当社見解)。一方でスクラッチのWebシステムは自由度が高い反面、社内に保守体制がない場合は外部の開発会社への依存が続きやすい傾向があります(当社見解)。
どの移行先が自社に合うかは、業務の複雑さ・利用人数・予算・社内のIT体制によって変わります。移行先ごとの特徴と向くケースは移行先比較の記事で整理しています。
なお、移行を検討する前にまず現状のAccessシステムがどの程度複雑かを把握することが重要です。属人化が進んでいる場合、移行前の解析に思いのほか時間がかかることがあります。現状把握が難しい場合は、無料の解析可否チェックを活用してください。
人材がいないままの移行は可能か
社内にAccessを触れる人間がいない状態でも、移行プロジェクト自体は進められます。当社では、Accessファイルの設計情報を解析することで、現状の業務ロジックや依存関係を把握したうえで移行の要件を整理するアプローチを取っています。
ただし、移行プロジェクトで必ず必要になるのは「業務の判断ができる人」です。Accessの技術知識がある人ではなく、「どの処理が正しいか」「例外はどう扱うか」を判断できる業務担当者が必要です。この人が社内にいれば、技術面は外部で補えます。
また、移行後のシステムについて「誰が管理するか」を事前に決めておくことが重要です。せっかく移行したのに、移行後のシステムも属人化してしまうのでは問題が繰り返されます。移行先ツールの管理者を育てるコストも含めて計画を立てることをおすすめします。
よくある質問
Q. 外部に保守委託するとして、どのくらいの費用がかかりますか。
保守委託の費用は依頼頻度・修正の難易度・業者によって大きく変わります。月額固定の保守契約とスポット対応(作業時間単価)の2パターンがあり、当社が把握している事例では月額数万円台からのものも見られますが、確定した相場ではありません。修正ニーズがほぼない場合は、スポット対応の窓口だけ確保しておくほうがコストを抑えられます。
Q. Accessを研修で社内育成するのは現実的ですか。
操作研修で基礎知識はつけられますが、実際のシステムを安全に保守できるレベルに育てるには、現存するAccessを実際に触りながら学ぶ時間が必要です。属人化が進んでいるシステムほどリスクを理解せず触るのが怖くなるため、解析で構造を見える化してから育成を始めるのが現実的な順序です。
Q. 移行先の選定は人材がいない状態でも自社でできますか。
ツールの比較・概算費用の確認・向くケースの整理は自社でできます。ただし、具体的な移行要件の定義(何をどう再現するか)は、業務に詳しい担当者と外部の技術者が組んで進める方が失敗が少ない。「全部外注すれば安心」でもなく、業務知識は社内から出すのが基本です。
Q. 人材もいなくて予算も限られている場合、何から手をつければよいですか。
まず業務手順書の作成(低コスト)とバックアップの整備(比較的コストを抑えやすい)から始めることをおすすめします。手順書とバックアップだけで万全というわけではありませんが、「担当者が変わっても最低限業務手順がわかる」「復元テストを経てデータを戻せる可能性を高める」という2つの備えになります。その次のステップとして現状のAccessシステムの解析を行い、移行の複雑さと費用感を把握してから中長期の判断をするのが、無理のない進め方です。
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