Access移行のヒアリングシート|聞くべき項目チェックリスト
Access移行の初期ヒアリングで見積・要件が固まる8カテゴリ33設問を解説。システム概要・利用人数・データ量・帳票数・外部連携・VBA有無・保守体制・移行目的・予算を、回答から何が分かるかと合わせてチェックリスト形式で提供します。
結論:ヒアリングシートの目的は「情報収集」ではなく「見積と要件の根拠を作ること」
Access移行のヒアリングで「どんな業務に使っていますか」と聞くだけでは、見積も要件も固まりません。当社の支援案件では、聞き方が曖昧なまま進めたプロジェクトほど、設計工程に入ってから「実は○○もある」という追加情報が出てきます。
ヒアリングシートに設問を並べる目的は2つです。ひとつは「移行先の選定と費用の根拠になる情報を揃えること」、もうひとつは「要件定義に使える業務の実態を文書化すること」。この2点が揃わないまま進むと、後工程で設計の手戻りが起きます。以下では、当社が移行支援で実際に使っている設問の構成を、カテゴリ別に解説します。
カテゴリ別ヒアリング設問リスト(そのまま使える形式)
設問は8つのカテゴリに分けています。すべてを一度のヒアリングで聞こうとすると担当者の負担が大きいため、当社では「①システム概要・②利用状況・⑧移行の目的・期限・予算」を最初のセッションで確認し、「VBA・外部連携」の詳細は解析工程と並行して2回目以降に確認することが多いです。
① システム概要
| 設問 | 回答から分かること |
|---|---|
| このAccessは何年前から使っていますか(おおよそで可) | VBAの世代・構造の複雑さの目安 |
| 誰が作りましたか(社内担当者・外部業者・不明) | ソースの入手可否・引き継ぎリスクの有無 |
| 現在も改修できる人は社内にいますか | 移行前の暫定対応の可否、属人化リスク |
| 仕様書や設計書はありますか | 解析工程の難易度と期間の見立て |
| ファイル形式は .accdb ですか .mdb ですか | ファイル形式の世代把握と、移行前の変換・互換性確認の要否 |
② 利用状況(人数・拠点・利用時間)
| 設問 | 回答から分かること |
|---|---|
| 同時に使う最大人数は何人ですか | 移行先の同時接続要件(5〜10人超でSQL Server化の目安) |
| 使う場所は1拠点ですか、複数拠点ですか | ネットワーク構成・リモートアクセスの要否 |
| ファイルはどこに置いていますか(共有フォルダ・OneDrive・個人PC) | 現行の共有方式のリスク把握、移行後のサーバー構成 |
| 稼働時間帯はいつですか(24時間対応が必要か) | 移行先の可用性要件・メンテナンス窓の確保 |
| スマートフォン・タブレットから使いたいですか | iOS・Android向けAccessアプリは提供されていないため代替手段の要否確認(Windowsタブレットは動作要件を満たせば利用可) |
③ データ量・件数
| 設問 | 回答から分かること |
|---|---|
| ファイルサイズはどのくらいですか(わからなければ「確認します」で可) | 2GB上限への接近度・移行前の最適化要否 |
| 主要テーブルの最大レコード数はどのくらいですか | 移行先の性能要件・初期データ移行の工数見立て |
| 画像・PDFなどの添付ファイルを保存していますか | OLEオブジェクト・添付ファイル型の取り扱い(移行先によっては変換工数が大きい) |
| 過去データは何年分ありますか。全件移行が必要ですか | 初期データ移行の量・アーカイブ方針の確認 |
④ 画面(フォーム)と帳票(レポート)の数
| 設問 | 回答から分かること |
|---|---|
| 今使っている画面(入力フォーム)は何画面くらいありますか | フロント再構築の工数目安 |
| 印刷・出力している帳票(レポート)はいくつありますか | 帳票再現コストの見立て(帳票数は実態より少なく言われることが多い) |
| 帳票のレイアウト(行間・列幅・ロゴ位置など)は厳密に守る必要がありますか | kintone等のローコードで再現できるかの判断基準 |
| AccessからExcelやWordへ出力している処理はありますか | VBAによるファイル生成処理の有無(移行後の代替手段が必要) |
⑤ 外部連携
| 設問 | 回答から分かること |
|---|---|
| Accessから他のシステムへデータを渡していますか(会計・販売・給与など) | 連携先への影響範囲・API対応の要否 |
| Excelファイルを取り込んで処理していますか | インポート処理の再実装コスト |
| 外部データベース(SQL Serverなど)にリンクテーブルで接続していますか | バックエンドの現状把握・段階移行の可否 |
| メール送信・Web API呼び出しなどネットワーク処理はありますか | VBAのWinHTTP/XMLHTTP利用の有無(HTTP通信方式・認証・TLS・参照ライブラリの互換性確認が必要) |
⑥ VBA・マクロの有無
| 設問 | 回答から分かること |
|---|---|
| VBAコード(プログラム)は書かれていますか | 解析・変換の難易度。「ない」と言われても実際はある場合が多い |
| 計算や判定のロジックが込み入っている処理はありますか | VBAの移植コスト・移行先の選定に影響する |
| ActiveXコントロール(カレンダー・ツリービューなど)を使っていますか | 64bit環境での非互換リスク(移行前に点検が必要) |
| VBAにパスワードがかかっていますか | 解析作業の事前準備(パスワード解除の合意が必要) |
⑦ 運用と保守体制
| 設問 | 回答から分かること |
|---|---|
| 現在、バックアップは取れていますか(誰が・いつ・どこに) | 運用リスクの現状把握・移行後のバックアップ設計の前提 |
| 障害が起きたときに対応できる担当者はいますか | 移行後の保守体制の確認・委託の要否 |
| 移行後のシステムを誰が管理しますか(情シス・外部委託・担当者本人) | 移行先の選定基準(管理工数・難易度に影響) |
⑧ 移行の目的・期限・予算
| 設問 | 回答から分かること |
|---|---|
| 移行を検討したきっかけは何ですか(サポート終了・担当者退職・不具合など) | 優先度と緊急度・移行先の要件に影響する動機 |
| いつまでに新しいシステムに移行したいですか | スケジュールの可否判断(逆算スケジュールの参考になる) |
| 予算はどのくらいを想定していますか(おおよそで可) | 移行先の絞り込み・提案の方向性 |
| 段階的な移行(一部機能から先行)は受け入れられますか | ハイブリッド移行・フェーズ分割の可否 |
聞き漏らしやすい項目と、なぜ出てこないか
上記の設問リストを使っても、実際のヒアリングでは出てきにくい情報があります。当社の経験から、特に見落とされやすい3点を挙げます。
まず「帳票の数」です。担当者は日常的に使うレポートしか思い浮かべないため、月次・期末限定の帳票、VBAがExcelテンプレートに流し込んで生成しているファイルなどが抜けます。「印刷ボタンを全部押してみる」「VBAのコード内にExcelやWordのファイルパスが出てこないか確認する」という補完作業が必要です(詳しくは業務フロー調査の進め方を参照)。
次に「VBAの複雑さ」です。「VBAがある」と言われても、その内容が単純なフォーム開閉なのか、複雑な計算ロジックを含む処理なのかは、ヒアリングでは分かりません。担当者も「コードがある」としか認識していないことが多い。当社では、コードの行数よりも「業務ルールがVBAに埋まっているか」を確認することを重視しています。
最後に「変えたくない操作性」です。担当者が長年使ってきたキー操作の順序・画面遷移・帳票の見た目は、意識して聞かないと出てきません。「移行後に何が変わると困りますか」という問いを追加すると、設計段階での現場反発を減らせます。
ヒアリング結果から何が決まるか
8つのカテゴリの回答が揃うと、移行プロジェクトの輪郭が見えてきます。
利用人数が常時5人以下・単拠点・帳票が少ない場合は、kintoneやPower Appsなどのローコードツールが候補に入ります。10人超・複数拠点・複雑な帳票がある場合は、SQL Serverバックエンド化またはWebシステム化が現実的な選択肢になります(移行先の比較は移行先の選び方を参照)。
VBAが複雑・帳票数が多い・外部連携がある、という3条件が重なると、移行の工数は積み上がります。この段階でざっくりした費用感を掴めるのがヒアリングシートの本来の役割です。
当社では、ヒアリングシートの設問に回答いただくだけで、現状の整理と移行方針の素案を当社側で資料化する仕組みを用意しています。「何から手を付ければよいかわからない」という段階でも、無料の解析可否チェックから現状確認を始められます。
よくある質問
Q. ヒアリングシートは事前に配布して記入してもらう方がよいですか。
記入を依頼する方法と、ヒアリング当日に口頭で確認する方法どちらでも機能します。当社の実務では、事前配布するとシステムに不慣れな担当者が「分からない」で空白のまま返してくることが多いため、最初のセッションは口頭確認で進め、記録を当社側で取る方式を採っています。2回目以降のセッションで事前記入を依頼すると、回答の精度が上がります。
Q. Accessの担当者が退職済みで、現行システムの詳細が分かる人がいません。
担当者がいない場合は、Accessのナビゲーションペインでオブジェクト一覧(テーブル・クエリ・フォーム・レポート・モジュール)を確認するところから始めます。必要に応じてDatabase Documenterで定義情報を出力し、現在の業務担当者(使っている側の人)と合わせて「この画面は今も使っていますか」「この帳票は誰が出力しますか」と確認していく進め方が現実的です。詳しくはブラックボックス化したAccessの解析手順を参照してください。
Q. 設問が多すぎて、担当者に全部答えてもらえるか心配です。
一度に全部聞く必要はありません。当社の実務では、最初のセッションで「①システム概要・②利用状況・⑧移行の目的・期限・予算」の3カテゴリを確認するだけで、移行先の大まかな方向性と費用感の話ができます。残りのカテゴリは解析工程と並行して確認する、という分け方が担当者の負担を減らします。
Q. ヒアリングシートとRFPの違いは何ですか。
ヒアリングシートは移行を検討している社内の情報を整理するための設問集です。RFPは、整理した情報をもとに外部の開発会社に提案を依頼するための文書です。ヒアリングシートの回答が揃ったあとに、その内容をRFPに転記する流れになります。RFPに書くべき項目はAccess移行のRFP・要件定義書の作り方で解説しています。
触れないAccessが「診断できるか」だけ、確かめませんか。
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