Access解析報告書の読み方|リスク判定と見積もりの妥当性をどこで確認するか
Access解析の報告書を受け取ったら、分母・根拠・未調査の3点をまず確認。リスク判定(D1〜D3)の分布の読み方、見積もりの妥当性を確かめる3つの照合点、稟議に使う3つの数字の拾い方を発注側の視点で解説します。
結論:まず見るのは「分母・根拠・未調査」の3点
Accessの解析や現状調査を外部に依頼すると、報告書が納品されます。このとき発注側が突き当たりやすい壁は、内容が読めないことではなく、「この報告書を信用してよいのか」「この後の見積もりは妥当なのか」を判断する物差しがないことです。
先に結論を書きます。報告書の品質は、技術用語の難しさではなく次の3点でおおむね判断できます。①数字に分母が付いているか、②リスク判定に理由と場所が書かれているか、③調査できなかった範囲が明示されているか。この3点が揃った報告書は移行の見積もり比較や社内稟議の材料にしやすく、どれかが欠けると後工程で行き違いが生まれやすい、というのが当社の考えです。自社の報告書をこの3点を軸に設計しているのも、そのためです。
なお、依頼する前の準備は依頼前の社内チェックシートで整理しています。このページはその続き、「報告書を受け取った後」の話です。
報告書を受け取ったら確認する3点
| 確認点 | 良い例 | 注意が必要な例 |
|---|---|---|
| ①数字に分母があるか | 「対象142オブジェクト中、調査済み138・未調査4」 | 「32件の問題を検出」(何件中かが不明で、網羅性を判断できない) |
| ②リスクに理由と場所があるか | 「T_受注明細:使用量が上限2GBに接近。年度分割を推奨」 | 「危険な箇所が複数あります」(どこが・なぜかが書かれていない) |
| ③未調査の範囲が明示されているか | 「パスワード保護されたフォーム3件は未調査として別紙に一覧」 | 未調査への言及が一切ない(すべて調べたのか、触れていないだけか区別できない) |
特に③は補足が要る点です。「未調査」の記載がある報告書を不完全だと感じるかもしれませんが、当社の見方は逆です。自動解析には原理的に確認できない領域(実行時にしか現れない挙動など)があるため、丁寧な調査ほど「どこまで調べ、どこを調べていないか」の境界が書かれるはずだと考えています。未調査ゼロをうたう報告書のほうが、むしろ根拠を確認したほうがよいというのが当社の考えです。
リスク判定の読み方(3段階判定を例に)
解析報告書の形式や、リスクの段階の呼び方・基準は会社ごとに異なります。ここでは当社の報告書で使っているD1/D2/D3の3段階を例に、「業務側がどう読むか」を説明します。段階分けのある報告書であれば、読み方の骨格は応用できるはずです。
| 判定 | 意味 | 業務側の読み方 |
|---|---|---|
| D1(早急に対応) | 容量上限への接近や破損リスクなど、停止の可能性が高い箇所 | 「いつ動くか」の判断材料。件数が多い場合は移行以前に応急対応の検討が要る |
| D2(計画的に対応) | 直ちに支障はないが、属人化や設計上の課題を抱える箇所 | 移行計画の本体。ここの件数と内訳が移行費用のボリュームを決めやすい |
| D3(当面は安定) | 現状では大きな問題のない箇所 | 後回しにできる範囲。「全部を一度に移行しなくてよい」根拠になる |
読み方のポイントは、D1の深刻さよりも件数の分布です。たとえば142オブジェクト中D1が5件・D2が17件・D3が116件という分布なら、「危険な箇所は少数に集中しており、大半は後回しにできる」と読めます。つまり、最初の稟議はD1対応分だけの小さな金額に絞り、残りは段階的に進める計画が立てやすくなります。全件が一律に「要対応」とされている報告書では、この優先順位付けができません。
見積もりの妥当性をどこで確認するか
報告書の後には移行の見積もりが続きます。金額そのものの高い安いを外から判断するのは難しいのですが、報告書と見積もりの「つながり」は確認できます。見るのは次の3点です。
- 見積もりの範囲が報告書の分母と対応しているか(142オブジェクト中どこまでが対象で、どこからが対象外か)
- 金額の内訳がリスク判定の分布と整合しているか(D2の件数が多いのに一式いくらの見積もりは、根拠を確認する)
- 相見積もりを取る場合、各社に同じ分母を渡しているか
3つ目は実務上の効きどころです。解析報告書が「開発会社に渡せる形式」で納品されていれば、他社への相見積もり依頼にもそのまま添付でき、各社の金額を同じ前提で比較しやすくなります。当社の解析納品物(全体サマリー・カバレッジレポート・解析手法の説明書・機械可読データの4点)も、相見積もり依頼への添付を前提にした構成にしています。報告書を作った会社に発注する義務はありません。
見積もり比較で金額以外に見るポイントはベンダー選びの7つのポイントで、費用の相場観はAccess移行の費用相場で解説しています。
稟議・上長説明に使う数字の拾い方
報告書は技術文書ですが、稟議で使う数字はそのなかの一部だけです。当社では、次の3つに絞って拾うことをおすすめしています。
- 止まると困る範囲:D1相当の件数と、それが支える業務(例:受注・請求)。「放置した場合に何が起きうるか」の説明に使います
- 期限:使用中のバージョンのサポート終了日。Access 2021(Office LTSC 2021)は2026年10月13日に終了予定で、ESU(有償の延長セキュリティ更新プログラム)のような延長制度はありません
- 段階化した費用:全面移行の総額ではなく、フェーズ1(D1対応)だけの金額。最初の決裁を小さくできます
報告書の全ページを説明する必要はありません。経営層向けの1〜2ページのサマリーが付いている報告書なら、それに上記3点を添える形が、稟議資料の骨格として使えます。
よくある質問
Q. 報告書が専門的すぎて社内で読める人がいません。
全部を読む必要はありません。この記事の3点(分母・根拠・未調査)とリスク判定の分布を確認すれば、発注判断に必要な要点はおおむね押さえられる、というのが当社の考えです。報告会(説明の場)を設けている会社であれば、そこで「業務側の言葉でいうと何が問題なのか」を質問するのが早道です。
Q. 解析を頼んだ会社に、そのまま移行も発注しないといけませんか。
いいえ。解析と移行開発は別の会社に発注してかまいません。ただし、報告書を他社の見積もりに使ってよいか(利用や共有の制限がないか)は契約条件によるため、解析を依頼する時点で確認しておきたい点です。当社を含め、相見積もりへの利用を前提に納品物を設計している会社もあります。
Q. 「未調査」が多い報告書は品質が低いのでしょうか。
件数だけでは判断できません。見るべきは、未調査の理由(パスワード保護・破損・実行時挙動など)と場所が一覧になっているかどうかです。理由つきで開示されていれば、追加調査するか・そのリスクを許容するかを発注側が選べます。開示がないまま「完了」となっている報告書のほうが、後から範囲外の問題が出たときに対処しづらくなります。
Q. 報告書をもらう前に、品質を見分ける方法はありますか。
契約前にサンプルレポート(体裁の見本)の提示を求める方法があります。その際、この記事の3点が入っているかを確認してください。当社の場合は解析サービスのページでレポートのイメージと納品物の構成を公開しています。これから依頼する段階の方は、ファイル送信なしで使える無料の解析可否チェックもご利用ください。
解析可否の無料チェックのご案内
保守が難しくなったAccessについて、解析が可能かどうかのみを無料でご確認いただけます。顧客データの送信は不要で、発注義務もございません。
所要約2分・ファイル送信不要・発注義務はございません/ご説明はオンラインにて承ります