Access解析・移行を依頼する前の社内チェックシート|確認しておく10項目
Accessの解析・移行を外部に依頼する前に、社内で確認しておく10項目をチェックシート形式で整理。ファイル形式(.accde/.mde)の見分け方、稟議に揃えておきたい3つの数字、担当者退職前の優先対応まで発注前の準備を解説します。
結論:完璧な資料は不要、確認しておくのは10項目
Accessの解析や移行を外部に依頼しようとすると、「何を用意すればいいのか」で最初に手が止まります。つまずきやすいのは、「仕様書を作ってからでないと相談できないのでは」という思い込みで、依頼の前に長い準備期間を置いてしまうパターンです。
先に結論を書くと、依頼前に仕様書や要件定義書を作り込む必要はありません。それは解析や要件整理の工程で開発側と一緒に作るものです。一方で、社内でしか確認できないことが10項目あります。これが揃っているかどうかで、見積もりの速さと正確さ、そして社内稟議の通しやすさが変わってきます。
なお、ベンダーに「何を伝えるか」(RFPの書き方)は別の記事で整理しています。このページはその前段階、「社内で何を確認しておくか」に絞ります。
依頼前チェックシート(10項目)
そのまま社内確認に使える形で一覧にします。すべて埋まらなくても依頼はできます。「不明」という答え自体が、解析の必要性を示す重要な情報になるためです。
| 項目 | 確認すること | なぜ必要か |
|---|---|---|
| ①対象ファイルの所在と数 | どのフォルダ・サーバーに何本のAccessファイル(.accdb / .mdb)があるか | 見積もりの基本単位。現場が個別に作った「野良Access」まで含めるかどうかで、依頼の範囲と費用が変わる |
| ②ファイルの形式 | 拡張子が .accdb / .mdb か、.accde / .mde か | .accde / .mde はVBAのソースコードが取り出せない形式のため、解析の工数と費用が変わる |
| ③作った人の在職状況 | 開発した本人が在職中か、退職済みか、退職予定か | 在職中なら聞き取りで補える。退職予定があるなら依頼の優先度自体が変わる |
| ④資料の有無 | 仕様書・操作手順書・引き継ぎメモなど、断片でも残っていないか | なくても依頼できるが、あれば解析結果の突き合わせに使える |
| ⑤利用人数と業務上の重要度 | 日常的に使う人数と、止まったときに影響する業務の範囲 | 移行方式(段階移行か一括か)と優先順位の判断材料になる |
| ⑥ファイルサイズ | 対象ファイルのサイズ(MB / GB) | Accessファイル1本あたりの上限2GB(システム領域分を除く)にどこまで近いかで、対応の緊急度が判断できる |
| ⑦リンクテーブル・外部連携 | 別のAccessファイル・SQL Server・Excel・基幹システムとの接続の有無 | リンクテーブルでつながっていると、1本に見えて実は複数ファイル構成のことがある。範囲の見誤りを防ぐ |
| ⑧帳票と提出先 | Accessから出力している帳票の種類と、社内・社外・行政のどこへ出すか | 帳票の数と種類は移行費用に響きやすい(受託開発での当社の経験則)。社外提出があると様式変更の調整も必要になる |
| ⑨業務を説明できる人 | 「このAccessで何の業務を回しているか」を話せる人がいるか | 作った人と業務を語れる人は別でよい。ヒアリングの相手が決まっているかどうかで進行が変わる |
| ⑩予算枠と期限 | 社内の予算枠の有無・決裁ルート・間に合わせたい時期 | 概算でも示せると提案の精度が上がる。Access 2021利用中なら2026年10月13日のサポート終了が一つの目安になる |
①の洗い出しの具体的な手順は社内Accessファイルの棚卸し方法で解説しています。
②のファイル形式だけは、依頼前に必ず見ておく
10項目のうち、依頼前の確認を特にすすめたいのが②のファイル形式です。確認は簡単で、対象ファイルの拡張子を見るだけです。エクスプローラーで拡張子が表示されない場合は、ファイルを右クリックしてプロパティを開けば確認できます。
.accde と .mde は、Accessデータベース(.accdb / .mdb)を配布用に保存した「コンパイル済み」の形式です。Microsoftの公式ドキュメントにあるとおり、この形式ではVBAのソースコードが除去されており、コードの閲覧・編集やフォーム・レポートの設計変更ができません。データの入力や帳票の実行など、日常の利用自体は可能です(Microsoft Support: Hide VBA code from users)。この形式しか残っていない場合、解析のやり方も費用も .accdb とは変わってくるため、見積もり依頼の時点で伝わっているかどうかの差が大きいのです。
「元の .accdb / .mdb がどこかにあるはずだが見つからない」ということもあります。その場合は、作った人のPC・過去のバックアップ・ファイルサーバーの旧フォルダを探す価値があります。元ファイルが見つかれば、解析は通常の手順に戻せます。見つからない場合の対応はaccde / mdeで中身が見られないAccessの解析で詳しく書いています。
「作った人」と「業務を語れる人」は分けて考える
③と⑨をあえて別項目にしているのには理由があります。依頼側はしばしば「作った人がいないから何も説明できない」と考えて相談をためらいますが、解析を進めるうえで本当に必要なのは、システムの作りを知っている人よりも「この業務がどう回っているか」を話せる人です。
暗号化・VBAプロジェクトの保護(閲覧ロック)・破損がない通常の .accdb であれば、テーブル構造・クエリ・VBAの処理内容は解析で読み取れます。読み取れないのは「なぜその処理があるのか」という業務上の理由のほうです。受託開発での当社の経験則ですが、業務担当者が質問に答えられる案件は要件整理が安定して進み、担当者が誰も決まっていないまま進めるとテスト段階での差し戻しが増える傾向があります。
作った人が退職予定という場合は、チェックシートの記入より先に、在職中にしか聞けないことの聞き取りを優先してください。何を聞いておくべきかは担当者が退職する前の引き継ぎ8項目にまとめています。
稟議のために揃えておきたい数字
依頼の実務でつまずきやすいのは、技術的な準備よりも社内の合意形成です。上長や経営層への説明では、次の3つの数字が揃っていると話が進みやすくなります。
- 影響範囲:そのAccessが止まると何人の業務が止まるか(⑤)
- 期限:使っているAccessのバージョンのサポート終了日。Access 2021(Office LTSC 2021)は2026年10月13日に終了予定で、ESU(有償の延長セキュリティ更新プログラム)のような延長制度はありません
- 費用の段階:一括で全額を稟議にかけるのではなく、まず解析(現状診断)だけを先行させる選択肢があること
特に押さえておきたいのが3つ目です。「移行するかどうかも決まっていないのに数百万円の稟議は通せない」という状況でも、現状把握のための解析だけを小さく発注し、その報告書を材料に移行本体の稟議を上げる、という二段構えが取れます。当社の解析サービスもこの進め方を前提にしています。
よくある質問
Q. 10項目が半分も埋まりません。依頼できますか。
依頼できます。埋まらない項目は「不明」と伝えてください。どこが不明かがわかること自体が、解析側にとっては範囲を見積もる手がかりになります。全項目の記入を目指して依頼を遅らせるほうが、期限との関係では不利になりがちです。
Q. ファイルを渡さないと見積もりは出ませんか。
会社によります。当社の場合、正式なお見積りは実ファイルの事前確認を経て提示しますが、その前段階として、ファイルを送らずに解析可否を確認できる仕組みを用意しています。他社に依頼する場合も、NDA(秘密保持契約)を結ぶ前にファイル本体を送ることは避けたほうが安全です。
Q. 複数のAccessファイルがあります。全部まとめて依頼すべきですか。
まとめて洗い出したうえで、依頼は重要度の高いものから段階的に、という進め方が実際的です。①⑤の情報が揃っていれば、どれを先に解析すべきかの優先順位はベンダー側からも提案できます。
Q. チェックの結果、緊急性が低そうでした。それでも今動く意味はありますか。
緊急でなければ急ぐ必要はありません。ただ、③の「作った人の在職状況」だけは時間とともに条件が悪くなる項目です。退職や異動の前に、聞き取りと最低限の資料化だけ済ませておくと、将来の選択肢が広がります。
依頼前の現状確認には、ファイル送信なしで使える無料の解析可否チェックも活用してください。10項目のうち②⑥⑦と⑤の利用人数(ファイル形式・ファイルサイズ・外部連携・同時利用の人数)を手元に置いて回答すると、数分で結果が確認できます。
解析可否の無料チェックのご案内
保守が難しくなったAccessについて、解析が可能かどうかのみを無料でご確認いただけます。顧客データの送信は不要で、発注義務もございません。
所要約2分・ファイル送信不要・発注義務はございません/ご説明はオンラインにて承ります