AIに質問させて業務フローを整理する方法|対話プロンプト付き
業務フロー図が書けないのは暗黙知が原因。AIに「業務フローを作って」と丸投げせず質問役をさせ、答えるだけで手順を引き出すやり方を、コピペで使える対話プロンプトとMermaid図の例つきで解説。AIに任せてよい範囲と人が決める範囲の線引きも示します。
結論:業務フローは「自分で書く」より「AIに質問させる」方が早く出てくる
業務フロー図を作ろうとして白紙のまま手が止まる。その原因は、たいてい書き手の能力ではありません。毎日やっている手順ほど頭の中で自動化されていて、いざ言葉にしようとすると出てこない。いわゆる暗黙知です。
ここでAIの使い方を一段変えます。「業務フローを作って」と丸投げするのではなく、AIに質問役をやらせる。あなたは質問に答えるだけ。これだけで、自分では言語化できなかった手順が順番に引き出されていきます。当社がAccess移行の現場調査で使っているやり方を、コピペで試せるプロンプト付きで紹介します。
なぜ「答えるだけ」だと業務が言語化できるのか
白紙に業務フローを書く作業は、「何を書くべきか」を自分で決めながら「どう書くか」も同時に処理します。負荷が二重にかかるので、慣れていないと途中で詰まります。
一方、質問に答えるのは負荷が軽い。「その作業は誰が始めますか」「例外はありますか」と一問ずつ聞かれれば、記憶を1つ引き出すだけで済みます。人は白紙より穴埋めのほうが答えやすい、という単純な性質を利用しているだけです。AIは疲れず、同じ質問を切り口を変えて何度でも投げてくるので、聞き役として都合がいい。
コツは1つだけ。AIに「まとめて全部聞く」のではなく「1問ずつ、私の回答を見てから次を決めて」と指示することです。質問をまとめて10問渡されると回答が雑になりがちですが、対話形式なら1つの答えから次の掘り下げが生まれます。
対話を組み立てる3ステップ
使うAIはChatGPT・Claude・Geminiなどの対話型で試せます。ただし、指示への追従性やMermaid生成の精度、入力データの取り扱い条件は製品・プランで差があるので、機密を扱うなら後述の注意も確認してください。手順は次の3つです。
- AIに役割と進め方を指示する(質問役をお願いする)
- 一問一答で、業務の開始から終了まで聞き出してもらう
- やり取りをフロー図の下書きに変換させる
最初のステップで使うプロンプトはこれです。そのまま貼り付けて、対象業務の名前だけ書き換えてください。
あなたは業務システムの移行を担当するコンサルタントです。
これから私の担当業務「受注処理」について、あなたから1つずつ質問してください。
私は質問に答えるだけにします。次のルールを守ってください。
- 質問は1回に1つだけ。私の回答を読んでから次の質問を決める
- 業務の「開始のきっかけ(誰が・いつ・何を受けて始めるか)」から
終了まで、時系列の順に聞く
- 通常の流れが一通り見えたら、例外処理・月末や期末だけの作業・
エラーが出たときの対応を必ず確認する
- 私の答えが曖昧なときは、具体例を挙げて聞き直す
準備ができたら、最初の質問だけをしてください。あとは聞かれるまま答えていくだけです。当社が現場で使った感触では、20問前後のやり取りで通常フローと主要な例外がひととおり出てくることが多い、という程度の目安です(業務の複雑さで前後します)。答えているうちに「そういえばこの処理もあった」と芋づる式に思い出せるのが、この方法の効きどころです。ヒアリングで何を押さえるべきかはヒアリングシートの項目チェックリストにまとめています。
やり取りをMermaidで図に落とす
質問が一巡したら、そのままフロー図の下書きを作らせます。図の記述にはMermaid(マーメイド)という、テキストで書けば図になる記法を使うのが便利です。AIはMermaidの下書きを生成できるので、その文字列を作図ツールに貼れば図が表示されます。ただし構文エラーやバージョン差でそのまま描画できないこともあるため、エディタ側で構文を確認してください。
続けて次のプロンプトを送ります。
ここまでの回答をもとに、この業務の流れをMermaid記法の
flowchartで書いてください。
- 条件分岐(例外・判定)はひし形で表現する
- 人が手でやる作業と、Accessが自動でやる処理が区別できるように、
ノードのラベル先頭に【人】【Access】を付ける
- 私が確認しきれていない曖昧な点があれば、図の下に
「要確認リスト」として箇条書きで残す出力はたとえばこのような形になります。
flowchart TD
A[【人】受注メールを受信] --> B{既存の顧客か}
B -- はい --> C[【Access】受注入力フォームに登録]
B -- いいえ --> D[【人】顧客マスタに新規登録]
D --> C
C --> E[【Access】在庫を引き当て]
E --> F{在庫は足りるか}
F -- はい --> G[【Access】納品書をレポート出力]
F -- いいえ --> H[【人】仕入先へ発注メール(例外)]このコードを Mermaid Live Editor などMermaidに対応した作図ツールに貼ると図が表示され、そのまま手直しできます。図にすると「ここの分岐、実はもう1パターンある」と抜けに気づきやすくなります。AIの下書きを完成品として使うのではなく、間違い探しのたたき台として使うのが正しい距離感です。
AIに任せてよい範囲と、人が決めるしかない範囲
ここが一番大事なところです。AIは「手順を並べる」のは得意ですが、「なぜその手順があるのか」は知りません。答えなかった部分を、それらしい推測で埋めてきます。もっともらしい嘘が混ざる、という前提で扱う必要があります。
当社が線引きの目安にしているのは次の切り分けです。
| 作業 | AIに任せてよいか | 理由 |
|---|---|---|
| 通常フローの言語化・図への整形 | 任せやすい | あなたの回答を並べ替える作業が中心で推測が入りにくい。ただし要約時の抜けや取り違えは元の回答と照合する |
| 質問の切り口を増やす・抜けを指摘する | 任せてよい | 網羅性のチェックはAIの得意分野 |
| 例外処理が「なぜ」存在するかの判断 | 人が決める | 過去の事故対応やお客様との約束など、背景は現場しか知らない |
| どの業務を優先して移行するかの判断 | 人が決める | コスト・リスク・現場負担の重み付けは経営判断 |
| 「この処理はもう不要」という廃止の決定 | 人が決める | 使っていないように見えて期末だけ動く、が起こり得る |
AIが埋めた推測部分には、必ず「これは私が言っていない」という印を付けて、現場に確認する。この一手間を省くと、間違った前提のまま移行要件が固まります。AI生成資料をそのまま信じる危うさは、As-Is/To-Be分析の現状整理でも同じように問題になります。
Access移行の現状調査で、この方法をどう使うか
Access移行では、システムの中身(テーブル・クエリ・VBA)を解析するだけでは足りません。「そのデータを使って人が何をしているか」が抜けると、移行先で業務が回らなくなります。AI対話は、この人側の動きを引き出す前半戦に向いています。
一方で、Accessの内部そのものは対話では見えません。フォームの項目や帳票のレイアウトは、画面を撮って読み取らせるやり方が向いています。スクショ×AIで画面仕様書を作る手順と組み合わせると、人の動き(対話)とシステムの中身(スクショ)の両側から現状を固められます。ブラックボックス化して中身が読めない場合は、ブラックボックス化したAccessの解析手順も参照してください。
なお、Accessに付属していた比較ツール「Database Compare」は2026年6月にOfficeへの同梱・配布が終了しました(Access Blog)。M365版は新機能の追加が続く一方でこうした標準ツールの整理も進むため、現状把握の手段はツール任せにせず、対話やスクショ、外部の解析なども組み合わせて考えたほうが確実です。
当社では、この「AIに答えるだけで業務フローの骨格ができる」仕組みを、移行相談の入口として用意しています。何から手をつければいいか分からない段階でも、無料の解析可否チェックから現状の相談ができます。
よくある質問
Q. 業務のことを話すと、社外秘の情報がAIに学習されませんか。
顧客名や個人情報は、対話に入れる前に「A社」「担当者X」のように匿名化してください。業務の流れを整理するだけなら、固有名詞は無くても図は作れます。あわせて、使うAIの入力データの取り扱いを各社の公式ポリシーで確認しておきましょう。入力を学習に使わない設定やプランの有無、保存期間はサービスやアカウント種別で異なります。「無料版に機密を入れない」「会社が許可したサービス以外は使わない」というルールを先に決めておくと安全です。
Q. AIが作ったフロー図は、そのまま移行の要件定義に使えますか。
たたき台としては使えますが、そのままでは使えません。AIが推測で埋めた部分と、あなたが実際に答えた部分が混ざっているためです。現場で「この分岐は合っているか」「この例外は他にもないか」を確認して、初めて要件の材料になります。人がレビューすべき観点は別途整理する予定です。
Q. 現場の担当者が複数いて、人によって手順が違います。どうまとめますか。
担当者ごとに別々の対話をして、それぞれのフロー図を作ってから重ねる方法を当社では採っています。差分が出たところは、役割や権限の違いのこともあれば、属人化や表記ゆれが原因のこともあります。「なぜ人によって違うのか」を確認する材料になります。属人化そのものへの対処は脱・属人化の進め方で解説しています。
Q. Mermaidを使わず、いつものExcelやPowerPointで図にしたいです。
それでも問題ありません。AIには「業務の流れを、開始から終了まで番号付きの箇条書きで、分岐は『もし〜なら』の形で書いて」と頼めば、Excelやパワポに手作業で起こせる下書きが得られます。図の見た目より、抜けなく洗い出せているかのほうが大事です。
触れないAccessが「診断できるか」だけ、確かめませんか。
顧客データは送信不要。発注の義務もありません。
約2分・ファイル送信不要・発注義務なし/説明はオンライン・売り込みはしません